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井戸掘りで〝人と地下水〟との距離を伝える元トンネルマン
井戸掘りで〝人と地下水〟との距離を伝える元トンネルマン

井戸掘りで〝人と地下水〟との距離を伝える元トンネルマン

2022.03.28 水とともに

西田にしだ みのるさん

現役時代はトンネル工事で、全国を渡り歩きました。掘削を進めるには軟弱な地層や硬い岩盤、破砕帯、大量の湧水帯(層)にも遭遇します。硬い岩盤は熟練の坑夫さんの技術とダイナマイト量で解決できますが、大量の湧水は難敵です。その湧水が破砕帯と共にあると難儀の極みとなり、トンネルマンの真価が問われます。私たちには水こそが相手なのです。

福島でトンネル工事会社などを経営していましたが、2011年3月東日本大震災と原発事故で家族を山形へと避難させ、私は仕事のため福島に留まり、しばらく行き来する日々となりました。とても有り難かったのが山形の人たちが福島等からの避難者を温かく迎え入れてくれたことです。恩返しをしたいと考えていた時、除雪で苦労している高齢者が多いのを知りました。幸い私には簡単な道具で井戸を掘る知識があります。自宅に井戸があれば散水ホースを使って屋根に水を流して融雪でき、その水は年間を通して水温が一定。地下水なので水道代もかかりません。ホームセンターで必要な部材を揃えてシンプルな道具を作り、井戸掘りとそれを教える活動をボランティアで始めました。そして一昨年の3月、その活動をNHK山形放送局が取材、東北6県で放送してくれました。

この活動に福岡の友人が共感し、「いのちの地下水をつむぐ会」が発足されました。昨年は福岡県内8カ所で会のメンバーと実技を行い、全て成功。ある所では人力とシンプルな道具で地下21.2m迄の施工を2日程でやり遂げました。災害時のニュースで水の配給の行列を見るたび、足元に水があるのに…ともどかしく感じていましたが、今後は会のメンバーが自治体などへ働きかけ、避難所となる場所などで井戸掘りを伝えていくでしょう。若い人の力で全国へ広がることを願います。「水の惑星地球」と言われるように、海や川だけでなく地下にも広大な水脈と保水層が存在します。私たちは水の上に立っているということを、井戸掘りを通じてきっと体感していただけます。

井戸から水が出るとワァッと歓声が上がる
井戸から水が出るとワァッと歓声が上がる
女性同士の力でも掘れる
女性同士の力でも掘れる
井戸掘りに使う鉄パイプ
井戸掘りに使う鉄パイプ
記事=西田 稔

西田 稔

大分県出身、77歳。福島県で約30年トンネル工事会社などを経営。「いのちの地下水をつむぐ会」名誉顧問。(写真左、いのちの地下水をつむぐ会のメンバーと)

いのちの地下水をつむぐ会

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