門内 智子 さん
祖父が曽祖母の故郷である熊本県山都町（やまとちょう）の馬見原（まみはら）に疎開、その後土地を購入しました。そして農大を卒業した父が馬見原へ移り住み、農業をはじめました。馬見原は昔からおいし い釡炒り茶の産地で、父も主な作物として茶の木を栽培し、生産を始めました。その後を私が継ぎ、農家として2代目となります。
うちの畑の前には五ヶ瀬川の源流が流れています。五ヶ瀬川から時おり上がってくる川霧（かわぎり）も、茶葉に良いと聞いています。周辺の田んぼではゲンゴロウや水カマキリ、日本たにしなど、貴重な生き物も見られます。田んぼの水は山から引かれており、数年前にはサンショウウオの幼生がたくさんいて皆で驚いたことがありました。
樹齢百年を越える在来種の新芽を、希望者に手摘み体験していただいています
早朝、五ヶ瀬川からあがってくる川霧
寒さが厳しくなる11月～4月頃、度々霜が降り、茶葉が凍ります
以前から紅茶も好きで、ときどき茶葉を買って飲んでいました。パッケージの裏を見ると「インド」「スリランカ」など生産国の表示だけ。誰の手を介しどのような経路で自分の手に届いているのか分からないと、不安を覚えました。
目の前に茶畑があるので、父に「うちの茶葉で紅茶は作れるだろうか」と聞くと、「紅茶はできる。作るなら茶葉は使っても良いが、他の茶葉に匂いが移るのでうちの工場では作らないこと」。そこで紅茶を作っている隣地区の工場に茶葉を持ち込み、作り方を習って、作り始めました。現在はうちの工場で作っています。
元々は父が無農薬栽培を行い、在来種を大切にしていました。農林水産大臣賞など2度受賞（※）したこともある名人で、私に「中途半端はするな。するならちゃんとしなさい」と言いました。紅茶を作るのはチャレンジでしたが、幸運にも高い技術を持つ方々に教えていただき、今があります。
（株）ウチムラさんとの出会いは平成6年。シャインウォーターの新規のお客さまへ和紅茶をプレゼントされていると聞いています。おいしいお水で和紅茶をお楽しみいただけること、嬉しく思っています。
※昭和37年（1962年）農林省の品評会において熊本県で一等賞、昭和46年（1971年）農林大臣賞を受賞
萎凋（いちょう）させた生葉を揉んで紅茶にする60、70年前から使用する揉捻機
右は釡炒り茶の仕上げ乾燥をする水乾機。左は水出し茶や番茶の茶葉を焙じる丸釡
門内 智子
熊本県上益城郡山都町馬見原にて、亡き父の後をついで「岩永製茶園」を営む。「素晴らしい香りと味わいを具えた、卓越した風味の紅茶」としてジャパン・ティーフェスティバルプレミアムティーコンテスト2020で五つ星を受賞。
