水俣病という大きな試練を経た海で
今年SUP全国大会が開催

SUPガイド 大塚 基夫さん

5年ほど前、SUP(スタンドアップパドル)を水俣の湯の児海水浴場で仲間と始めました。ここの海は透明度が高く、島に囲まれ波も穏やかで、SUPに適しています。海の上に立つと空と海がいっそう広く、海中も綺麗に見えて、まさに海上散歩ですよ。多くの方に楽しんでもらえるようSUP体験のガイドを始め、競技会も行いました。私たちの活動に行政が注目して全国大会の誘致につながり、2020年10月に開催が予定されています。

ふだんは水俣産の無農薬甘夏を全国販売しています。約50年前、水俣病で漁ができなくなった漁師たちが、丘に上がり農家となって生産を始めた甘夏です。海を水銀で汚され職を失った自分たちが、丘で農薬を撒いてはいけないと完全無農薬で栽培。その活動を伝えようと、水俣病支援のため移住した両親が、全国に向け販売を始めました。私も子どもの頃から、あれだけの公害を経験しながらこの地で生きてきた人たちの強さと覚悟を、側で見てきました。現在約20軒の生産者さんがいて、午前中はちりめん漁、午後から甘夏畑という兼業の方も。みなさんよく働きます。そして常に自然とお客さまのことを考えて、甘夏を作っています。

昨年SUPの西日本大会を開催、たくさんの人が参加してくれました。閉会式の挨拶を頼まれ、台本もあったのですが、水俣の海を前にして私から出た言葉は、大きな試練を経た海と人にまた会いに来てほしいということでした。「海、こんなに綺麗なんですね」と驚かれるお客さまもいます。

SUPの帰りに、水俣病資料館に寄ってくださる方もいます。きっかけがSUPでも甘夏でもいい、水俣病と人々が乗り越えてきた歴史を、ここに来て、肌で感じて取ってもらえたらと思います。

2020年度SUPA(一般社団法人日本スタンドアップパドルボード協会)主催「第9回全日本SUP選手権大会RACE」は10月10日(土)、11日(日)、熊本県水俣市湯の児海水浴場にて開催。

大澤 基夫(おおさわ もとお)

熊本県水俣市で無農薬甘夏を生産販売する「からたち」代表。5〜10月は湯の児海水浴場でSUP体験をガイド。元カヌー国体選手。
からたちHP